TAKEO PAPER SHOW 2014

SUBTLE サトル|かすかな、ほんのわずかの

主催:株式会社竹尾 企画・構成:原研哉 日本デザインセンター

subtle [サトル]

  • 微妙{びみょう}な、かすかな、繊細{せんさい}な
  • 捕らえにくい、名状しがたい
  • [匂{にお}いなどが]ほのかな
  • [液体などが]希薄な
  • 鋭い、敏感{びんかん}な、鋭敏{えいびん}な

かすかな、ほんのわずかな

2014年の竹尾ペーパーショウは、テーマ「SUBTLE」をもとに、4つの視点から構成されます。

A: SUBTLE|CREATION

  • 石上純也 | Junya ISHIGAMI 建築家積層する草原

  • 色部義昭 | デザイナー積層する草原

  • 葛西薫 | Kaoru KASAI アートディレクター紙を貫こうとする石、あるいはそうさせまいとする紙

  • 田中義久 | Yoshihisa TANAKA グラフィックデザイナー保存ケース

  • 富井大裕 | Motohiro TOMII 美術家角

  • トラフ建築設計事務所 | TORAFU ARCHITECTS 建築家ひとつながりの糸

  • 中村竜二 | Ryuji NAKAMURA 建築家コントロール

  • 服部一成 | Kazunari HATTORI グラフィックデザイナーコンピュータドローイング

  • ハム・ジナ | Jinah HAM アーティストタグを見つめる

  • 原研哉 | Kenya HARA グラフィックデザイナーチョコレートの帽子

  • 三澤遥 | Haruka MISAWA デザイナー紙の花/紙の飛行船

  • 皆川明 | Akira MINAGAWA デザイナーPe!

  • 宮田裕美詠 | Yumiyo MIYATA グラフィックデザイナーわずかな接点でつながっているネックレスのようなもの

  • 寄藤文平 | Bunpei YORIFUJI アートディレクター紙・人・紙

  • 和田淳 | Atsushi WADA アニメーション作家かたつむりのさとる

B: SUBTLE|COLLECTION

C: NEW RELEASE

  • 深い色と強靭な繊維|ビオトープGA-FS - 舌本

  • アラベール

  • 玉しき

  • ヴァンヌーボV

  • tカラペ

  • STカバー

  • てまり

  • NTラシャ

  • マーメイド

  • クラシコトレーシング-FS

  • 羊皮紙

  • 黒気包紙

  • ルミナスホワイト

  • 里紙

  • ルミネッセンス

  • GAファイル

  • ロベール

  • 新だん紙

A: SUBTLE|CREATION A: SUBTLE|CREATION A: SUBTLE|CREATION




書籍



















  • 美術家の冨井大裕氏と建築家の中村竜治氏を迎え、第1回のトークセッションが開催された。「彫刻的な枠に捕われない彫刻の概念を探しつつ彫刻をつくっている冨井さんと、強い建築ではなく繊細な空間のリアリティを探そうとしている中村さん。そんな二人なら『SUBTLE』というテーマにぴたりと応えてくれると考えた」と、同展ディレクターの原研哉氏が両氏を紹介。
    冨井氏は「すぐに傷んで取り返しがつかなくなる紙の宿命を表現しようと考えた。その緊張感を象徴的に考えた結果、角だけが残った」と語り、中村氏は「曖昧さが特徴である紙のディテールを緻密にコントロールすると紙らしさは消えるのか、消えないのか。今回の作品はそれを知るための実験だった」と述べた。
    最後は原氏が「冨井さんも中村さんも、微妙かつ独創的な着想を現実の作品としてしたたかに定着させる力がある。そこに同時代的なものを感じる」と語り、活動領域の異なる同世代の両氏の共通点が浮かび上がる対談となった。

  • 第2回のゲストはアーティストのハム・ジナ氏とデザイナーの三澤遥氏。武蔵野美術大学と日本デザインセンター、それぞれの場所で原研哉氏と接してしてきた二人が本展に参加したのは「大学時代から発揮していたハムさんの“描く”ことで世界を感受する才能と、スタッフとしてその能力を感じていた三澤さんの 『SUBTLE』というテーマへの深い理解度を活かせる」と原氏が考えてのこと。
    ハム氏は「私の場合、描くことは考えること。そして何よりも伝える力を発揮できる行為。与えられた枠の中で描くのは難しかったが、最後には自分らしいものができた」と、三澤氏は「昔から鉛筆の削り屑が美しいと感じていた。『紙の花』は紙の積層を活かしてその魅力を凝縮したもの。『紙の飛行体』は植物の種子が風に舞う世界をイメージしている」と各々の作品への思いを語った。
    「二人とも、ピュアな感受性のアンテナをぴんと立てたまま世界に向き合っている。その姿勢が作品の中に息づいている。年を重ねてもそれが濁らないように続けてほしい」次代のクリエーションを担う二人に対する原氏からの期待の言葉で、今回の対談は締めくくられた。

  • 第3回のトークセッションは『紙の肖像』シリーズを撮り下ろした写真家の上田義彦氏を迎えた。「上田さんの写真にはものの魅力の核心をほんの一枚の画像で見事にすくい取るような冴えがある。だから紙の根源をもう一度見つめ直すこの展覧会で、僕らが既に知っているはずの紙を、上田さんの眼を通してあらためて知り直す機会をつくりたかった」と原氏。
    上田氏は「これまでなぜ紙を撮ろうと思わなかったのか、撮影の間に少し悔しい思いをした。紙は普遍的な美を備えている。それは普段は朧げな記憶として私たちの身体の奥にしまわれているが、撮影を通じてはっきりとした輪郭を成していった。それに気づくと“写欲”がむくむく湧いてきた」と撮影時の印象を語った。
    完成した写真について原氏は「上田さんの写真は撮った瞬間から古典になっていく。原初的ながらも鮮度を持ったイメージの古典として、紙の本質を改めて反芻させてくれた。竹尾にとって50年後も色あせない資産となったのではないか」と述べた。その後も最後まで、上田氏の写真と世界を見つめるまなざしを巡って、上田氏の近作に触れつつ対話が続けられた。

  • グラフィックデザイナーの服部一成氏を迎えた第4回のトークセッション。「『SUBTLE』というテーマをどう咀嚼するか色々と検討したが、やはり自分が紙に対して素直に魅力を感じている平面性を見つめていこうと決めた」という服部氏。極細の線で構成された作品の製作法に触れ、「マウスで落書きのように描いた線にコンピューターの簡単な計算機能で変形を加えていった」 と説明し、普段の仕事から即興性や偶然性をグラフィックに取り込む手法について語りおこした。
    後半は、デビュー作となった『キユーピーハーフ』や、個展『視覚伝達』での作品など、約15年間の作品を振り返りつつ、「定着手法をまるで知らない才気ある素人がつくったように見えるように」という自身のデザイン作法について言及していった。
    一連の表現について、原氏は「不安定で偶発性に満ちているように見えるが、その奥には強い確信が潜んでいる。糸のように細いけれども、その背後にある確信が引力となって、多くの今日的な才能を吸い寄せまとめていく力になっているのではないか」と話し、今回の対談が自身にとっても、服部一成の感覚世界を理解する手がかりの一端になったことを告げつつ対談を締めくくった。

  • 第5回のトークセッションに登場したのは、デザイナーの皆川明氏とグラフィックデザイナーの色部義昭氏。参加作品について皆川氏は「展示台を机に 見立て、そこに紙の居場所をつくった。日常の中で減りつつある紙との対話が自然と生まれる表現を考えた」と説明。一方、色部氏は「明快さが求められる普段の仕事とは逆の、“曖昧さ”をテーマにし、存分に楽しもうと思った」と作品へのアプローチを解説。霧のようにぼんやりと浮かび上がる文字の制作手法については「紙の裏に貼り込んだ蛍光色を白い展示台に反射させ、それを格子状の穴から 透過させている。当初は反射だけだったが、格子の形態変化を組み合わせることで表現に奥行きが出た」と語った。
    その後は両氏の近作を巡って対話は進む。皆川氏は、色に遠近の距離感や、温度や質量を感じるという独特の共感覚から、『ミナ ペルホネン』のテキスタイルの元になる描画の背景を語った。色部氏は、水面の光を巧みに構成した『市原市美術館』のVI計画など近作を紹介。「ナイーブに見える表現の背後に強い確信と、緻密なプランニングがある」と両者の創作姿勢を語る原氏とともに対話は深まっていった。

  • 第6回目の登壇者は、グラフィックデザイナーの田中義久氏。「世の中に生起する小規模ながらも意欲的な営みを敏感に 感受し、それを適切にヴィジュアライズする田中さんなら『SUBTLE』を真摯に受けとめてくれると考えた」と 原氏。参加作品について田中氏は「情報伝達の首座をインターネットに譲りつつある今、物性を持つ紙がどう在るべきかを考えて “アーカイブ性”に行き着いた」と話した。経年変化していく紙の様相を表現した『保存ケース』の製作手法については「紫外線を照射し続け、日焼け と同じ効果を出した」と説明した。
    後半は田中氏が近年制作したグラフィック作品や、アートユニット『Nerhol』として発表した作品を紹介。中でも原氏は、高い放射線量が 検出された福島の森のきのこを被写体にした写真集『その森の子供』に触れ、「現状を淡々と見せていくという静かながら強烈な批評性 をもつ写真集を、タイトルを横切る1本の線で鮮やかに表現した。タイトルと写真を装丁が見事に結晶させている」と賞賛した。22歳年下の田中氏の仕事から非常にインスパイアされたことを原氏が告げつつ、トークセッションは締めくくられた。

  • 第7回のトークセッションのゲストは葛西薫氏。参加作品の着想の背景について葛西氏は「原さんからの提案で、20年前に制作した東京ADCの受賞目録のアイデアを再現した。紙に貫かれた宝石は記念碑のようなもの」と話した。また「後ろから突き上げられる力に和紙は粘り強く耐えている。その姿に感心する」と和紙の特性を讃えた。原氏は「弱いのに強い、強いのに柔らかいという背反する紙の性質が、ほんの小さな“点”によって見事に表現されている」と賞賛した。 その後は葛西氏が手がけた近作を、所属するサン・アドのエピソードを交えながら紹介。書籍『壽屋コピーライター開高健』の装丁について葛西氏は「今の時代の人たちに興味を持ってもらうため、あえて文学臭をゼロにした」と説明。ポスター『HIROSHIMA APPEALS』については、「晴れた夏の空をテーマにしたのは、明るい印象とのコントラストにより悲しみが浮かび上がると考えたから」と解説した。人間が元来備えていた動物的感覚を呼び覚ますことに未来があると語る葛西氏。人の心を的確に捉える細やかなクリエーションの発端が垣間見える対談となった。

  • いよいよ終盤に差し掛かったトークセッション。第8回はトラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏と禿真哉氏、建築デザイン事務所ノイズの豊田啓介氏を迎えた。まずは原氏が「トラフには『空気の器』に発揮されたようなユニークな設計能力を、ノイズにはテクノロジーによって紙の潜在性を引き出してもらうことを期待した」と語った。
    参加作品についてトラフは「紙に閉じ込められながら自由曲線を描く糸と、紙から解放されながら幾何学的に張りつめられた糸。矛盾する様相によって立ち上がる緊張感を表現した」と、ノイズの豊田氏は「『SUBTLE』を意識しつつ、アルゴリズムを駆使して、紙を岩や重力場、舌などに見立て、その風情を生成した」と解説した。 続いて、続々と展開されるトラフの『空気の器』の広がりや、空気圧により建築表面が律動的に動くノイズの『FLIPMATA』など各々の仕事を紹介。最後は「ものやインテリアを基点とした従来とは逆の視座から建築を捉え直したい」とトラフが、「街中の建築が動き続ける世界も夢ではない。その技術的素地はできてきている」とノイズが、各々の建築の未来への展望を語りトークセッションは終了した。

  • 第9回はグラフィックデザイナーの宮田裕美詠氏とアニメーション作家の和田淳氏を迎えた。「宮田さんのデザインは一見乱暴なのに実はとても丁寧に咀嚼されていて、伝わり方へのしたたかな確信を感じる。和田さんが描くアニメーションの作風はまさに『SUBTLE』。物語とは言えないような不思議な時間が流れている」と原氏。宮田氏は「今回の作品は胸にキュンとくるものにしたかった。余計な手は加えず、紙そのもので素直に表現しようと考えた」と着想の背景を語った。和田氏は「動きや仕草そのものが持つ物語性や余韻を大切にしている。それを思い切り出せば自然と『SUBTLE』になると思った」と話した。
    対談は二人の仕事紹介へ進む。宮田氏のポスター『点初』について原氏は「見立てを誘うお茶らしく、見る人の自由な解釈を誘い出す余白がある」と分析し、和田氏の新作『Anomalies』については「どんな思想からも自由になれる中立な寓話性があるので何の抵抗もなく笑える」と賞賛した。最後は「外からの情報を断ち切らないと“個”は立ち上がらない。お二人の仕事にはそれがある」と原氏が語り、独創性はどんな姿勢から生まれてくるのか、その手がかりを感じさせる対談となった。

  • 全10回に渡るトークセッションの最後を飾るのは書家の石川九楊氏。「揺れ動く生が発する言葉を書で表すために、長い時間をかけて定型から自分を解放していった」という石川氏。出品作品『新作 若菜 上』に触れ、「一文字を一行で記した。例えば心という字の一文字目『こ』を、紙面の左端から右端へ『こ…ここ…こ…こ……………こ…こ…』と震えるように広げることで、凋落する光源氏の心のざわめきを表した」と、異形の書が生み出される背景を丹念に語りおこした。
    その後も、文字が炸裂するように書された『源氏物語Ⅱ花散里』や、毛細血管のように文字が跋扈ばっこする『徒然草』などの作品を紹介しつつ、「筆尖は集中の象徴。全細胞をその一点に結集させて書く」「書くとは筆という刃物で傷をつける行為。その原像は鍬で土を耕す姿で、人を人たらしめる営み」など、自身の言説“筆蝕”について言及した。
    最後は原氏が「筆が何かを蝕みながら言葉や思いを創造しようとする意欲を、石川先生の話や動作から読み出せた。新たなほとばしりを与える媒質として書や紙を見つめ直す貴重な機会になった」と締めくくり、トークセッションの全日程が終了した。

TAKEO PAPER SHOW 2014「SUBTLE」閉会のお知らせ

2014年6月1日(日)20時をもちまして、TAKEO PAPER SHOW 2014「SUBTLE」は無事終了いたしました。会期中は12,000人ものお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。今後、巡回展も予定しております。詳細決定次第、こちらでご案内させていただきます。

書籍『SUBTLE サトル|かすかな、ほんのわずかの』発行のお知らせ

TAKEO PAPER SHOW 2014「SUBTLE」の書籍『SUBTLE サトル|かすかな、ほんのわずかの』(編・発行:株式会社竹尾、企画・構成:原研哉+日本デザインセンター原デザイン研究所、定価3600円+税)が発行されます。会期初日より会場にて販売いたします。

トークセッション開催のお知らせ

本展ディレクションを務める原研哉氏が、参加クリエイターを迎えてトークセッションを行います(全10回)。出演者、スケジュール、参加方法はトークセッションページよりご確認ください。

主催:株式会社竹尾 企画・構成:原研哉 日本デザインセンター