コンセプト

太古の時代に生み出されてこのかた、
紙は、常に人間の傍にありました。
とくに、私たち日本人は、紙という一見脆く繊細な素材から、
正しさや、礼節など、さまざまなことを学び、受け取ってきた民族です。
紙とは何か。紙は人間に何を与え、紙から何を受け取ってきたか。
紙を使う社会には、どんな未来があるのか。
<竹尾ペーパーショウ2010>では、「原始」「原型」などの「原」を意味する
「proto-」をキーワードに、紙本来のあり方、そこに秘められた可能性と
紙が持つ真の力を実感する、体験型のペーパーショウを展開します。



proto-

【語源 protos(first;GK)】
1 原始の、根源の
2 最初の、主要な、本来の

protocol  作法、手続き;儀礼、典礼
proto-form  【言語】粗形
proto-history  原史、原史学
proto-human 原人
protoplasm  【生物】原形質
proto-planet  【天文】原始惑星
prototype  原型;典型;模範、手本

『グランドコンサイズ英和辞典』(三省堂)ほか




紙は汚れる
紙は破れる
紙は濡れる
紙は燃える
紙は褪せる
紙は移ろう
紙は儚い

それでも

紙は清い
紙は柔らかい
紙は温かい
紙は還る
紙は蘇る
美しく
強く

過去 現在 未来
ここにある
変わらずに
これからも

もう一度
紙と出合う

紙の持つ弱さが、実は、紙の美点である。

汚れる。破れる。変質する。
湿気に弱く、かつ燃えやすい。
産業素材としての紙は、いくつかの弱点を持っています。
しかし、脆く繊細な素材だからこそ、
日本人は紙に礼節をもって接し、
大切に扱うことを自らに課してきました。
神社仏閣の祭礼で使用される紙、
また、清潔さを示す掛け紙など、
人が紙に姿勢を正して向き合う姿には、
ある種の神聖さが漂います。
紙は弱い。けれども、その弱さゆえに、
人の内面から智慧を引き出す強さをも持ち合わせている。
今回、私たちは、紙の真の力=紙が紙であることの意味に迫ります。

紙に触れ、生まれる可能性。

実現したいのは、記録媒体としてではない紙の「原型」を示しつつ、
実際に触れ、本質を感じ取るためのアプローチ。
たとえば、紙の「原始」の姿、誕生と消滅、再生の仕組みを見せること。
たとえば、無垢な紙が備えている清らかさ、
ぬくもりなどの長所を視覚や聴覚、触覚、嗅覚を使って再認識すること。
たとえば、フラットな紙を折って造形し、無限の可能性を見出すこと。
そうした中で、紙と人間の関わり(過去)、今ここにある紙(現在)、
そして、将来の紙のあり方(未来)とその連鎖を、現してみせること。

未来のために、「原始」に還ろう。

紙とともに生きてきて、今がある。
これからも、私たちは、多くの紙を生み出し、
また紙から多くのものを受け取りながら歩んでいくでしょう。
あらゆることが大きく変容しつつある2010年代最初の年。
まっさらな心で紙に触れ、
美しさや優しさ、楽しさを体感することで、
人間は、世界は、さらに確かな豊かさを手に入れられる。
その可能性を、<竹尾ペーパーショウ2010>で、
存分に感じていただきたいと思います。

 

<竹尾ペーパーショウ2010>アートディレクター
山口信博 緒方慎一郎 山中俊治